深刻化する過重労働問題
日本経済はいま、大きな転換期を迎えています。従来型の企業経営が破たんしたことで「成果至上主義の導入」「終身雇用制の崩壊」「リストラによる組織改革」「失業率の上昇」「有効求人倍率の低下」「技術革新への早急な対応」といった複合的な雇用不安の要素が渦巻いている状況だと言えます。そうした中で社会問題化しているのが、「過重労働の深刻化」とそれに伴う「精神障害や過労死(自殺を含む)」です。
過重労働を強いられる環境では必然的に過度の心因ストレスが発生し、労働者は精神的な基礎疾患を急激に悪化させる可能性が高まります。結果として、うつ病やパニック障害に代表される精神疾患を患って、最悪の場合、過労自殺や過労死に至るケースも少なくありません。以下に最近あった事例を引用します。
【過労による心の病 08年度労災認定 最悪の269人】
2009年6月9日フジサンケイビジネスアイより引用
過労が原因で鬱病(うつびょう)などの心の病にかかり2008年度に労災認定された人は前年度より1人増の269人で、3年続けて過去最悪だったことが8日、厚生労働省のまとめで分かった。このうち未遂を含む自殺の認定は66人。前年度より15人減ったが、過去2番目に多かった。脳梗塞(こうそく)など脳・心臓疾患で死亡したケースの認定は16人増の158人。過労自殺、過労死とも高止まり状態が続いた。厚労省は「依然として働く人の職場環境が厳しい状態にあることが反映されている」としている。
当初労災と認められず、審査請求や訴訟で認定される事例が増えていることも判明。厚労省は「新たな資料が見つかるなどして、結果として最初の事実認定と異なるケースが多かった。今後、現場での調査をさらに徹底したい」と説明した。
以下略
企業はこうした労務問題にどう対峙し、どのように解決を図ればよいのでしょうか? まずは自社の「労働環境」を確実に把握する努力をすること、そして労働者の健康管理に係わる措置を適切に講じることが重要です。労務問題の解決は、企業にとって重要性も緊急性も高い最優先事項となります。
過重労働と企業が抱えるリスク
2001年厚労省は、「脳血管疾患および虚血性心疾患等(負傷に起因するものは除く)」の認定基準を一部改正し、従前の「短期間の過重労働」に加えて「長期間の過重労働(評価期間は発症前おおむね6ヶ月)」を労災認定の対象としました。
過重性の評価の目安として労働時間に重きが置かれるようになったのです。長時間・長期間にわたるいわゆる「過重労働」は、心因ストレスや肉体疲労の最たる要因であり、脳疾患や心臓疾患の発症との強い関連性が認められています。昨今の雇用不安の要素を考えると、多くの企業は労災認定を含めた訴訟リスクを抱えていると考えられるのではないでしょうか。
こうしたリスクは、企業の社会的信用や収益性にも大きく影響を及ぼすため、当事者意識をもって労務環境の改善に取り組み、リスクマネジメント体制を整備できるかどうかが重要です。これは企業の存続にも関わる大命題であり、最終的には収益の向上や事業成長に直結するでしょう。
【過労死の認定基準】
厚生労働省は、事態を重く受け止め「過労死」の認定基準をこれまでの「脳・心臓疾患に倒れる前の1週間の仕事の負担量」から、疲労の蓄積の実態を知るべくその調査対象期間を過去6ヶ月間まで拡げました。また「疲労の蓄積をもたらす最も重要な要因」であるとされる超過労働時間の評価の目安を次のように定めています。
1. 「発症前1ヶ月間に100時間以上」「発症前2~6ヶ月間にひと月あたり80時間以上」の超過労働があれば、業務と発症(過労死に至る)の関連性が強いと評価する。
2.「発症前1~6ヶ月間に45時間以上」の超過労働があり、それが長くなるほど業務と発症の関連性が徐々に強まると評価する。
3.「発症前1~6ヶ月間に1ヶ月あたり45時間以上」の超過労働が認められない場合は、業務と発症(過労死に至る)の関連性が弱いと評価でき、労働時間以外の負荷要因による身体的、精神的負荷が特に過重であると認められるか否かが重要となる。
血管疾患及び虚血性心疾患等(「過労死」等事案)の労災補償状況 ※単位/人
区分/年度 |
平成12年度 |
平成13年度 |
平成14年度 |
平成15年度 |
平成16年度 |
|
脳・心臓疾患 |
請求件数 |
617 |
690 |
819 |
742 |
816 |
認定件数 |
85 |
143 |
317 |
314 |
294 |
|
うち死亡 |
請求件数 |
- |
- |
- |
319 |
335 |
認定件数 |
45 |
58 |
160 |
158 |
150 |
|
健康障害防止のための具体的な対策とは?
企業は、長時間・長期間にわたる過重労働を排除し、環境構築を急ぐとともに労働者の健康管理に係わる適切な措置を講じなくてはなりません。その指針となるのが、2002年に策定された厚生労働省発の「過重労働による健康被害防止のための総合対策について」で、多様化する現代の働き方や健康障害の増加などを踏まえて2006年に一部改定されました。
※過重労働による健康障害防止のための総合対策(厚生労働省)【pdf:138KB】
過重労働者への対応のポイント
「過重労働による健康障害防止のための総合対策」では、事業者が過重労働による健康被害を防止するために講ずべき措置が示され、医師による面接指導(第66条の8)、意見聴取、保健指導、健康管理に関する体制の整備などが求められています。
医師による面接指導の際に推奨されている「長時間労働者への面接指導チェックリスト(医師用)」を参考に、家族、産業医、主治医などと連携して無理なく治療できるような就業配置を実施して、必要に応じて労働時間短縮などの措置を講じましょう。ここで企業側が着目したいのは当サイトのテーマでもある「産業医の活用」です。
※長時間労働者への医師による面接指導制度について【pdf:2.43MB】
【産業医を活用する必要性】
産業医とはでもご説明したように、健康被害の防止策や労務トラブル回避策として、長時間労働者やメンタル不調者を抱える企業には産業医との定期的な面接を実施する必要があります。
原則として、病気の発見や治療を目的とした面接ではなく「労働時間や業務内容が負担となって体調を崩していないか」「持病悪化の可能性はないか」などを確認しながら、本人の意思と企業の考え双方を尊重したうえで具体的なアドバイスを行います。
※産業医には守秘義務があります
実際に治療を行う主治医とは立場が異なる産業医は、会社の実態や細かな社内規定を充分に把握しているため、企業・労働者双方にとって最善・最良のメンタルヘルスケアが可能です。産業医を最大限に活用するためにも、企業は「労働者が産業医にどんなことでも相談できる環境」を整備する必要があります。産業医の活用は、労働者が安心して就業できる職場づくりの第一歩であり、それは同時に企業にとって大きなメリットになるのです。産業医についての詳細は以下よりご確認ください。
>>産業医の必要性
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